モンゴリアンチョップは何故モンゴリアンなのか

 モンゴリアンチョップ。例え、実際にどのような技であるのか、なぜモンゴリアンと付いているのかを知らずとも「モンゴリアンチョップ」という名前を知っている人は多いでしょう。
 しかし、同時にモンゴリアンチョップが何故「モンゴリアン」なのかを知らない人も多いかと思います。私たちが言葉を使うときは常にそうですが、大元の意味を知らずに、ただ「そのあたりのこと」を示す言葉として使っている。そういうことも多いかと思います。
 ここでは、そんな人達のために、モンゴリアンチョップの語源を説明します。
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 さて、モンゴリアンチョップの語源を話す前に、モンゴリアンチョップとはどんな技か、についておさらいしておきます。
 まず、モンゴリアンチョップを使うには相手の真正面に位置しなければなりません。距離はもちろんチョップが届くくらいの至近距離です。
 そして、おもむろに、右の図の(1)のように手を大きく、斜め上に広げます。
 続いて、図(2)のように、広げた両手を素早く相手の首めがけて、挟み込むように振り下ろします。この時、奇声をあげるのが元祖モンゴリアンスタイルです。
 なかには、図(1)の手を大きく広げる行為は要らないのではないかと思う人もいるかもしれませんが、これがあるとないとではモンゴリアンチョップの格好良さが格段に違ってきます。ここでいう「格好良さ」とは、そのまま「威力」に繋がってきますから、これは非常に重要なことです。このことについては後で詳しく説明します。


 では、本題の「モンゴリアンチョップ」の「モンゴリアン」とは何なのか、ということに移ります。
 まず「モンゴリアン」という言葉の定義をハッキリさせておきましょう。「モンゴリアン(Mongolian)」という言葉を英和辞典で引くと、「モンゴル人(語)の、 モンゴル人種」と出てきます。
 ついでに、「チョップ」を引くと「厚く切った、あばら骨つきの豚・羊の肉」と出てきますが、この場合のチョップは「プロレスリングなどで、平手で切りつけるように相手を打つこと」です。
 つまり、モンゴリアンチョップとは「モンゴル人の(モンゴル人種が使う)チョップ」ということです。
 では、モンゴル人は皆このモンゴリアンチョップを使うのでしょうか。モンゴルの伝統的な格闘技に、このようなチョップがあるのでしょうか。
 いいえ。そうではありません。「モンゴリアンチョップ」とは、現代の一人の格闘家が編み出した技なのです。そして、「モンゴリアン」という技の由来も、その格闘家から来ているのです。
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 左の写真に写っている辮髪姿の彼こそ、「モンゴリアンチョップ」を作った男、「キラー・カーン」です。リング名としては、「テムジン・モンゴル」等も使用しました。
 本名を「小沢正志」といい、1947年3月6日生まれの新潟県西蒲原郡吉田町出身のプロレスラーです。
 さて、今これを読んでいる方々のなかには、大変お怒りになられている人もいるかもしれません。「めっちゃ日本人やないけ!」とキレのいいツッコミを入れている人もいるかもしれません。
 確かに、彼は日本人です。別にモンゴル人の血が混じってるわけでもないようです。ですから、彼の放つチョップは正確に言うなら「ジャパネスチョップ」、最大限譲歩して「モンゴロイドチョップ」と言うべき。そういう意見もあるでしょう。
 しかし、少し待って下さい。確かに、彼の本名は「小沢正志」ですが、リング上の彼の名前は「キラー・カーン」であり「テムジン・モンゴル」なのです。
 多くの方々は御存知かと思いますが、プロレスというのは、ある程度「芝居」的要素を含んだ格闘技なのです。
 プロレスというのは、観客を楽しませることに重点をおいた格闘技です。
 ですから、そこで使う技は「格好良く」なくてはいけません。地味な技ばかりで、普通に勝っていたのでは観客は醒めてしまいます。もちろん「地味な技ばかりを確実にこなす」という役を持ったレスラーなら、そういう技の数々も観客にとって「格好いい」と感じるかもしれません。しかし、なんといっても盛り上がるのは「見た目が派手な技」です。だからこそ、「モンゴリアンチョップ」は、最初に大きく手を広げなければならないのです。
 さて、例えば「悪役レスラー」という言葉があるように、プロレスラーというのは皆なにかしらの「役」を持ち、リングに上がります。そして、その「役」に沿った対戦を行い、観客を楽しませる。そういう格闘技なのです。
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 つまり、リング上の彼は、あくまでも「キラー・カーン」であり、小沢正志とは全く別人なのです。そして、その「キラー・カーン」の「役」というのが「モンゴル人レスラー」というものだったのです。往年の彼がモンゴル正装の帽子に被って登場したりしたのは、このためです。

 そんな「正真正銘のモンゴル人」キラー・カーンが使う技ですから、この技の名前が「モンゴリアンチョップ」、「モンゴル人のチョップ」でも何らおかしいことはないのです。


 しかし、道理上おかしくなくても、よくよく考えれば「ジャパネスクチョップ」という技を聞いたことがないように、「モンゴル人が使うから、モンゴリアンチョップ」というのは安直すぎるかもしれません。例えば愛知県民がチョップを使ったとして、それを「愛知チョップ」と呼ぶでしょうか。さすがに呼ばないでしょう。なぜなら、その名前を聞いても、あまり格好いいと思わないし、想像も膨らまないからです。
 しかし、これが愛知の県庁所在地「名古屋」ならどうでしょう。
「名古屋チョップ」
 様々な想像が膨らみます。名古屋城の上に燦然と輝くしゃちほこのようなチョップなのか、はたまたきしめんのような幅とコッテリ感を持つチョップなのか。「モンゴリアン」もこれと同じなのではないのでしょうか。
「モンゴル人」
 「オマーン人」「アンゴラ人」等とは違い、日本人はこの言葉だけで頭のなかにモンゴルの緑の大平原と、そこに住む遊牧民の姿を思い描くことが出来ます。その空想の世界を旅する遊牧民の熱く高潔な魂に触れたとき、人はその思い、ひいては「モンゴル人」を「格好いい」と思ってしまうのではないのでしょうか。
 
 そう「モンゴリアンチョップ」の「モンゴリアン」とは、ただモンゴル人というだけの意味ではなく、「遊牧民のような熱き魂がこもった」という意味を含んだ言葉だったのです。
 
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by akuda | 2005-01-15 22:10 | スキル
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